責任者
成瀬 代士久
佐野 誠
成味 太郎
金子 裕太郎
近年、治療を要する不整脈関連の患者様は増加傾向にあります。治療の対象は、めまい・動悸・息切れ・失神などを伴う脈の乱れだけでなく、普段はほぼ無症状であっても、突然死・脳梗塞・心不全の予防を目的に治療を行う場合もあります。当科の不整脈診療グループでは、治療経験豊富な医師を中心に、薬物療法から高度なカテーテルやデバイス治療に至るまで広く取り組み、患者様のお役に立てるよう日々精進しています。
現在行っている主な治療は、以下の通りです。
・カテーテルアブレーション手術 (高周波焼灼、冷凍凝固、内視鏡下レーザー照射)
・デバイス移植術 (ペースメーカー、両心室ペーシング、植込み型除細動器)
・デバイスリード抜去手術
・左心耳閉鎖手術 (科内の他グループと共同)
いずれの治療についても最新の知見に基づいた患者様第一の治療を心がけております。
心房細動や上室性頻拍、心房粗動、心室性期外収縮、心室頻拍などに対してカテーテルアブレーションによる根治療法を行っています。局所麻酔または深鎮静、全身麻酔で行います。治療の詳細は不整脈の種類により異なりますが、基本的には、高周波アブレーションカテーテルによる焼灼で不整脈の原因となる異常な電気回路(リエントリー回路)の一部を切断したり、異常な電気の発生源をつぶしたり閉じ込めたりすることで不整脈を抑制することが可能です。心房細動のアブレーションでは症例に応じて高周波カテーテルの他にも冷凍凝固バルーンやレーザーバルーンを使用することもあります。難治性の心室頻拍に対しては心外膜アプローチ(通常のアブレーションは心内膜アプローチと言ってカテーテルを血管に通して心臓の内側を焼灼しますが、心外膜アプローチではみぞおちからカテーテルを心臓の外側のスペースに導いて心臓の外側を焼灼します)によるカテーテルアブレーションも行っています。アブレーション手術のための入院治療にはクリニカルパスを導入しており入院期間は3泊4日が標準的です。再発に注意が必要ですが、経過が良ければ、薬や通院を終了することも可能です。
徐脈性不整脈(脈が遅くなる不整脈)の多くは薬が有効ではないため、ペースメーカー植込み手術が中心となります。局所麻酔での治療が可能です。通常、電極リードの体内への留置を必要としますが、当科では、小さな本体のみを心臓の先端に置くタイプのものが使用可能となっています(リードレスペースメーカー)。また、リード線を正常な電気の通り道に沿って留置する最新治療にも取り組んでいます(ヒス束ペーシング、左脚エリアペーシング)。
致死的な頻脈性不整脈には、植込み型除細動器 (ICD)による治療を行います。患者さんの状況に応じて、皮下植込み型除細動器 (S-ICD)を使用する場合もあります。
薬の効果が十分でない心不全に対しては、薬物治療に加え、心臓再同期治療(CRT)といって心臓を挟み込むように刺激して収縮を助ける治療を行います。また、ペースメーカー・植え込み型除細動器の効果を十分に得るために植え込み治療の前後で、カテーテルアブレーションを併せて行う場合があります。
デバイス移植術のための入院治療にもクリニカルパスを導入しており、入院期間は9日間前後が標準的です。
また、原因不明の脳梗塞や失神に対して、その原因となる不整脈の検出目的に植込み型心電計(ICM)を移植する精密検査を行っています。ICMは入院で行うこともありますが、日帰り外来手術で行うことも可能です。
いずれのデバイスを植え込んだ場合も在宅から不整脈や機械の情報を知らせてくれる遠隔モニタリングのシステムがあり、積極的に導入しています。
カテーテルアブレーション治療の適応疾患の例