浜松医科大学循環器内科

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構造的心疾患インターベンション

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PTSMA

肥大型心筋症(HCM)とは、高血圧や弁膜症など心肥大をおこす明らかな他の原因なしに、左室の異常な肥大を起こす疾患です。日本人に多いといわれている心尖部肥大型心筋症はおおむね経過が良好ですが、その他に、左心室の出口にあたる左室流出路や左心室中部の肥大が強く、血液の駆出が妨げられる閉塞性肥大型心筋症(HOCM)というタイプがあり、息切れや胸痛、失神などの症状を引き起こすことがあります。治療には以下のような種類があります。

1.薬物療法

まずは降圧薬の一種類であるベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬、抗不整脈薬(ジソピラミド、シベンゾリン)などの内服により過剰な心収縮を抑制させる治療を行います。内服薬のみでは充分な改善が得られない重症な閉塞型肥大型心筋症の場合、非薬物療法を検討します。

2.ペースメーカー、植え込み型除細動器

ペーシングにより流出路の圧較差(心室と大動脈の血圧の差)を軽減する効果があると考えられ、ペースメーカー植え込み手術が行われることがあります。失神をきたすような危険な心室性不整脈を合併した場合には植え込み型除細動器の挿入を検討します。

3.心筋切除術

欧米では、開胸手術で肥大した心筋を切除する心筋切除術が古くからよく行われています。僧帽弁の構造異常などを同時に治療することができ、効果も確実ですが、日本においてはこの手術に習熟した施設が少ないのが問題です。また、年齢や他疾患の合併のために外科手術の対象とならない場合もあります。

4. 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)

経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)は1995年より欧州で始まり、薬物治療無効例に対し、心筋切除術の代替治療として位置づけられる治療法です。治療の仕組みは、カテーテルを用いて、左心室の出口(流出路)を圧排する肥大心筋に流れる血管、「中隔枝」(左冠動脈前下行枝の分枝)にエタノールを極少量注入して、肥大心筋を焼灼し、薄くすることによって左室内圧較差を減らす治療法です。本治療の最大の特徴は、「低侵襲性」(体力の消耗や傷口が小さいこと)です。カテーテル治療担当医(前川)が数人の医師とともに、経胸壁心臓エコーを併用しながら担当、治療を行います。カテーテル治療は基本的に局所麻酔で行い、治療に要する時間は3時間前後です。当院では、治療を行う前に、事前に1週間弱の検査入院をして頂いている関係上、治療当日は事前の検査結果を参考に治療を行っています。治療にともなう入院期間は2週間前後です。カテーテル治療の成否は、治療終了時の左心室と大動脈の圧較差で判定します。カテーテル治療後は、閉塞性肥大型心筋症外来にて、心臓超音波、心臓CT、心臓MRIおよび心肺運動負荷試験などを施行させて頂き、治療効果の判定および評価を行います。
当科では主に、水曜午前、および金曜午前の前川医師の外来で、肥大型心筋症患者様の診察を行っています。症状をはじめ、心筋肥大の程度、僧帽弁逆流や不整脈合併の有無などを総合的に判断し、よくご相談させていただいた上で治療方針を決定しています。他院からご紹介いただくケースで、薬物療法を変更あるいは強化すると症状が改善するケースも少なくありませんが、必要に応じて、カテーテル治療を含めた治療マネージメントもさせて頂きます。

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