大動脈弁狭窄症は高齢化社会に伴い増加の一途を辿っていると考えられ、潜在的な患者数は80万人にも上るとの報告もあります。この病気の難しい点は重症の大動脈弁狭窄症であっても、全く症状のない症例が少なくないため、その発見が遅れることです。しかし、ひとたび狭心症・失神・心不全などの症状が発現しますと、その後の経過が極めて不良となります。原則的な治療としては外科的な大動脈弁置換手術となります。しかし、治療の必要ありと判断された時点で、手術困難な症例が約4割近くにあるとの報告もあります。高齢で体力が低下している方をはじめ、基礎疾患等の理由により開胸での手術を行うにはリスクが高すぎる患者さんが多いからです。このような外科的手術適応の難しい症例がTAVIの良い適応となります。
TAVIの対象患者さんは高齢かつ高リスクであるため、心臓血管外科医、循環器内科医のみならず、放射線科医、麻酔科医、理学療法士や看護師、放射線技師、臨床工学技師の総力を併せた集学的な治療が大変重要となってきます。